深まる秋に魅せられる角館

深まる秋に魅せられる角館

角館(かくのだて)の地理と武家屋敷

秋田県の角館は江戸時代の面影が色濃く残り、「みちのくの小京都」とも呼ばれる城下町。三方を山に囲まれ、南に玉川、西には桧木内川(ひのきないがわ)が流れています。春には桧木内川沿い2kmの桜並木が壮観で、秋には武家屋敷通りを彩る紅葉が見事。

1620年(元和6年)、藩主・芦名義勝(あしなよしかつ)の時代に築かれた角館は、およそ400年の歴史を持ちます。江戸時代の藩政期、角館城の内町(武士が住む区域)と外町(町人が住む区域)に区分されました。現在、国道46号から城内防火地前に広がる約6.9haのエリアが「武家屋敷通り」と呼ばれ、1976年9月には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。公開されている武家屋敷は「石黒家」「青柳家」「河原田家」「小田野家」「岩橋家」「松本家」などがありますが、今回は中でも代表的な「岩橋家」と「石黒家」に焦点を当ててみます。


人力車で街巡り

角館の名物の一つが、人力車。地元出身の車夫さんたちは撮影に協力してくれたり、観光客に当日の見どころやおすすめグルメ情報を教えてくれたりと、とても親切です。

  • 運行時間:9:00~17:00
  • 料金(2人乗り)
    • 約15分:3,000円
    • 約30分:5,000円
    • 約60分:9,000円

1. 角館樺細工伝承館

  • 所在地:〒014-0331 秋田県仙北市角館町表町下丁10-1
  • 開館時間
    • 12月~3月:9:00~16:30
    • 4月~11月:9:00~17:00
  • 観覧料(展示室):高校生以上500円/中小学生300円

江戸時代から続く手工芸「樺細工(かばざいく)」と角館の歴史や風土を紹介する施設。山桜の樹皮を使った工芸は、耐湿・抗菌性が高いのが特徴で、200年以上前に藤村彦六によって始められたと伝わります。館内では職人の実演を見ることができ、1階には無料休憩スペースや樺細工を扱うショップがあります。

2階には武士の鎧や武具など、歴史資料も展示。伝統的な技術と美しい桜皮の質感を楽しむことができる見どころ満載の施設です。


2. 岩橋家

  • 所在地:秋田県仙北市角館町東勝楽丁3-1
  • 公開期間:4月10日~11月30日、9:00~17:00
  • 料金:屋外は無料見学(宅内公開は状況に応じて要確認)

岩橋家は藩主・芦名氏の重臣で、芦名家が途絶えた後は佐竹北家に仕えた中級武士の家柄。1900年の大火で周辺は焼け野原になりましたが、岩橋家だけは奇跡的に焼失を免れ、江戸時代の武家屋敷の姿を今に伝えています。

敷地内には樹齢300年以上の古柏(こかしわ)や天然杉の屋根、江戸中期の中級武士の暮らしを感じさせる部屋の構造が見どころ。2002年の山田洋次監督映画『たそがれ清兵衛』のロケ地にもなりました。


3. 角館のグルメ

角館の街には、古い民家を改装した飲食店が多数並んでいます。たとえば…

  • 藤八堂(とうはちどう):秋田名物の比内地鶏を使った親子丼が人気。
  • 古泉洞(こいずみどう):日本三大うどんの一つ、秋田の稲庭うどんを堪能。
  • 丸川(まるかわ):山菜うどん(850円)やキノコうどん(950円)、鴨うどん(1,250円)など価格もお手頃。

さらに、秋田プリンの有名店では新鮮な牛乳や天然バニラを使った濃厚でなめらかなプリンが大人気。毎日多くの観光客が行列を作るほどです。


4. 石黒家

  • 所在地:秋田県仙北市角館町表町下丁1
  • 営業時間
    • 4月~11月:9:00~17:00
    • 12月~3月:9:00~16:00
  • 入館料:高校生以上500円/小中学生300円

武家屋敷通りの北端に位置する石黒家は、1809年に建てられた主屋が現存する最古の建造物として人気のスポット。院内の樹齢300年超の大木や苔むした庭石から、歴史の趣を感じ取ることができます。

石黒家は江戸時代に佐竹北家の財政を担った由緒ある家柄。現在も直系の子孫が一部屋敷内に居住しており、公開範囲を見学できます。スタッフが丁寧に家屋の構造や歴史を解説してくれるので、武士の暮らしぶりをより深く知ることができると評判です。


5. 平福記念美術館

  • 所在地:秋田県仙北市角館町表町上丁4-4
  • アクセス:JR角館駅から徒歩約22分(約1.8km)
  • 営業時間
    • 4月~11月:9:00~17:00
    • 12月~3月:10:00~16:30
  • 休館日:毎週月曜、年末年始(12月28日~1月4日)
  • 入館料:高校生以上300円/小中学生200円

近代日本画の巨匠、平福穂庵(ほうあん)・百穂(ひゃくすい)の父子を記念して建てられた美術館。展示スペースは広くないですが、約30分ほどでゆったり鑑賞できます。設計は国立能楽堂や法政大学などを手がけた大江宏氏で、シンプルかつ洗練された建築が撮影スポットとしても人気です。


まとめ

角館は、四季折々で異なる風情を見せる「みちのくの小京都」。春の桜、夏の緑陰、秋の紅葉、冬の雪景色と、いつ訪れても心を癒やす魅力があります。江戸情緒あふれる武家屋敷や手工芸「樺細工」の伝統、豊かな自然、地元食材を生かしたグルメなど見どころ満載。秋の紅葉に染まる武士住宅街道を散策して、その奥深い歴史と文化に浸ってみてはいかがでしょうか。