石北峠での日の出
大江本家温根湯ホテル ⇒ 石北峠で日の出を
午前3時半。友人と私は北見市の「大江本家温根湯ホテル」を出発し、この日の最初の目的地「石北峠」へ向かいました。最終的には旭川市内のホテルがゴールです。カーナビの指示通り国道39号線をひたすら進むと、そこが北見市と旭川市を最短距離で結ぶ“石北峠”に到達します。静まり返った深夜の空気を切り裂く車のエンジン音。窓を少し開けているため、ひんやりとした風が頬をかすめます。暗闇を照らすヘッドライトが、私たちを峠の方向へ導いてくれました。
国道39号を西へ走る
大江本家から石北峠までは約38km。標高が徐々に上がる中、友人は車の速度を落としつつ前方の道路状況を注意深くチェックしていました。道幅は広く舗装も良好ですが、森の中から動物が飛び出してくるかもしれないと心配になるからです。約40分ほどかけて、無事に標高1050mの石北峠の頂上へ到着しました。
車を降り、展望スペースに立つと、胸が高鳴ります。まもなく夜明けを迎えるというワクワク感。空がうっすらと白んでくる様子を見守りながら、刻一刻と移ろう空気を肌で感じました。
夜明けの瞬間
それから約20分後、ついに太陽の一筋の光が雲海の奥から差し込んできます。黄色味がかった柔らかな光が次第に広がり、周囲の山々も徐々に輪郭をあらわします。山並みと雲海が溶け合う境界が金色に染まる光景は言葉では言い尽くせないほど美しく、私たちはその壮大なドラマに心を奪われました。
雲海はゆっくりと流れ、白銀色の筋のように山々を包み込みます。音更岳(おとふけだけ)をはじめとする大雪連峰や北見富士、さらには雄阿寒岳(おあかんだけ)、雌阿寒岳(めあかんだけ)までもが姿を現しました。この圧巻の風景は、大自然の恵みに対する畏敬と感謝の気持ちを一層強くしてくれます。
旅の続きと懐かしの曲
再び車に乗り込むと、友人が用意していた音楽CDをかけてくれました。それは1980年代にリリースされた長坂純一さんの「石北峠」という楽曲。歌詞には「山の向こうにも山があるのか/あこがれを抱いて国道を進む/雲の向こうにも雲があるのか/北国の果てへ漂う青春……」といったフレーズが並び、石北峠や大雪山を舞台にした思いを綴っています。80年代の歌とのことで私は詳しく知りませんでしたが、その旋律と歌詞の美しさにすぐに魅了されました。
朝日の尊さ
朝焼けに照らされる太陽は、まさに大自然からの贈り物。1日のはじまりを告げる最も神秘的で感動的な瞬間と言えるでしょう。天気予報や日の出時刻は現代なら容易に調べられますが、現地の気象条件や標高によっては微妙に変化し、まさに一期一会の体験となります。夜の闇が明るい光へと移り変わる様は、希望と活力をもたらしてくれるように感じます。
私自身、日の出を見るたびに“新しいエネルギー”をチャージしている気がします。石北峠の日の出は、北海道を旅したなかでも特に印象深いもの。もしあなたも朝焼けの美しさを求めるのであれば、少し早起きして未明に出発し、そこでしか味わえない幻想的な瞬間と巡り合ってみてはいかがでしょうか。