青森・中野もみじ山――日本でも屈指の紅葉スポット

1 中野もみじ山の概要

中野もみじ山は、青森県黒石市に位置し、中野川が流れる周辺一帯や中野神社から中野山にかけて広がる紅葉が有名な場所です。

例年、紅葉の見頃は10月中旬から11月上旬頃までとなっており、日本最大級の宿泊予約サイト「じゃらん」でも「日本一美しい紅葉スポット」のひとつとして紹介されています。その美しさから「東北の小嵐山」とも称えられています。
2 中野神社・中野もみじ山

中野神社は、795年に坂上田村麻呂が蝦夷平定の際に、この地の平穏を願って日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀ったのが始まりと伝えられています。
記録によれば、中野神社にあるカエデの木は、1802年に弘前藩主・津軽寧親(つがるやすちか)公が温湯(ぬるゆ)村に滞在した際、不動の滝の景観に感銘を受けたことをきっかけに、翌1803年4月、京都から百数種のカエデの苗木を取り寄せ、そのうち3株を中野の「不動尊」に奉納したものだといわれています。

神社の境内にある滝は「不動の滝」、赤い橋は「不動の橋」と呼ばれ、「不動」という名は古くから津軽に根づく「不動尊」への信仰に由来しています。610年(推古8年)、唐の僧・日智上人が聖徳太子の命を受け、一本の木から3体の「不動明王」像を彫り上げ、それぞれ長谷沢神社、中野神社、国上寺に安置したと伝わり、これらが「津軽三不動尊」として信仰を集めてきました。

時を経て、中野神社のもみじ山は紅葉を楽しむ名所として広く知られるようになりました。現在では樹齢100年を超えるカエデが約130本、なかには樹齢200年を超えるものもあり、さらに樹齢700年を超えるスギの木や高さ34mを超す大杉など、市の天然記念物に指定されている木々がそびえています。特に大杉は津軽地方を代表する巨木のひとつとして評価されています。
規模としては京都の紅葉ほど大きくはありませんが、鮮やかな紅葉、流れ落ちる滝や小川、赤い橋などが織りなす風景は息をのむ美しさです。例年、10月中旬から11月上旬にかけて紅葉が見頃を迎え、とりわけ10月下旬から11月上旬にかけての紅葉は、格別の美しさを誇ります。

今年は10月20日(金)から11月5日(日)の16:00~21:00にかけて夜間ライトアップが行われ、臨時の観光案内所や露店も設置される予定です。

明治11年(1878年)頃、イギリスの冒険家で旅行作家のイザベラ・バード(1831年10月15日~1904年10月7日)が黒石市を訪れ、中野山にも足を運んだそうです。彼女はここの景色に感動し、「ここはとても美しい。秋には無数のカエデの葉が緋色や濃紅色に染まり、長旅をしてでも見る価値がある」と絶賛したと伝えられています。
中野もみじ山の散策ポイント

まずは中野神社の入口にある大鳥居をくぐり、境内へ進みます。そこから赤い小橋「不動の橋」に向かうと、橋の上から「不動の滝」が見える絶好の撮影スポットです。小橋を渡って右手に進むと、小川沿いに何十本ものカエデが植えられており、真っ赤に染まる紅葉を間近で楽しめます(こちらも人気の撮影ポイントです)。
さらに進むと中野神社の正面に到着します。神社の周囲には樹齢500年、600年以上といわれる2本の大杉があり、神聖な雰囲気を感じられます。そこから神社脇の小道を石段に沿って登ると「観楓台(かんぷうだい)」に到着します。川沿いの燃えるような赤い紅葉とは少し趣が異なり、黄紅色の葉が落ち葉の絨毯を作り、ふかふかとした踏み心地が楽しめるスポットです。
3 紅葉観賞のちょっとした知識

3.1 日本における紅葉観賞の歴史
ご存じでしたか? 日本で紅葉を観賞する習慣は平安時代以前にさかのぼるとされ、当初は貴族の楽しみでした。それが江戸時代になると庶民へ広がり、明治以降は紅葉狩りを目的とする旅行が一般的になったといわれています。現代でも紅葉狩りは日本人にとって秋の風物詩として大切に受け継がれています。
3.2 紅葉前線

日本には「桜前線」や「花粉前線」などさまざまな“前線”がありますが、秋になると特に話題になるのが「紅葉前線」です。紅葉前線とは、各地域で紅葉が始まる時期を地図上で線で結んだものを指し、緯度や標高の影響を受けながら北から南へ、高い所から低い所へと徐々に移動していきます。例年、北海道の大雪山で9月中旬頃に始まる紅葉が、12月頃に九州で終わるまで、全国を少しずつ染め上げていくのです。
3.3 葉が赤や黄に変化する科学的原理
秋になり気温が下がり日照時間が減ると、葉緑素が茎や根へ移動します。その結果、葉に含まれるカロテノイドが多い場合は黄色やオレンジ色に、アントシアニンが多い場合は赤色に色づきます。気温の日較差が大きいほど、紅葉はより鮮やかになります。
3.4 紅葉狩りの注意事項
- 動きやすい服装・歩きやすい靴で出かけましょう。防寒対策として、マフラーや手袋、使い捨てカイロなどもあると便利です。
- 枝を折ったりせず、マナーを守って紅葉を楽しみましょう。写真撮影の際は周囲にも気を配り、お互いに気持ちよく観賞したいですね。
- 「立ち入り禁止」の看板がある場所には入らず、ルールを守りましょう。
- ゴミは必ず持ち帰るようにしましょう。
4 中野もみじ山へのアクセス
- 東京方面から
- 東北新幹線で約3時間20分 → 新青森駅 → 特急「津軽」で約30分 → 弘前駅 → 弘南鉄道で約30分 → 黒石駅
- または、東京から高速バスで約9時間 → 黒石駅
- 仙台方面から
- 高速バスで約4時間半 → 黒石駅
- 黒石駅からのバス
- 弘南バス(大川原線)で約31分 → 「中野神社前」下車 → 徒歩1分で到着
- または弘南バス(板留・虹の湖・温川線)で約25分 → 「中野南口」下車 → 徒歩5分で到着
秋の静寂のなかで色づく中野もみじ山は、散策するだけでも心が洗われるような素晴らしいスポットです。ぜひ足を運んで、青森の秋を満喫してみてください。