「地獄」は温泉にあった!?
☆温泉の源泉を「地獄」と呼ぶ理由
日本の一部地域では、湧き出る熱湯と噴き上がるガスがまるで“地獄”のような景観を作り出すため、温泉の源泉地を「地獄」と呼ぶことがあります。
有名な例として、九州・別府にある「地獄めぐり」や、箱根温泉の“大涌谷(かつては地獄谷と呼ばれていました)”、そして北海道登別温泉の「地獄谷」などが挙げられます。
☆中日文化における地獄・鬼・閻魔王
- 中国文化
中国では「地獄」は陰間(いんかん)の牢獄を指し、「鬼」は死後にきちんと埋葬されなかったり、大きな無念を抱えて亡くなった人が“幽霊”になると考えられています。
陰間を治める閻羅王は、死者の善悪を裁いて行き先(天国・人間界・地獄)を決める存在です。鬼・地獄・閻羅王が一体となって、死後の裁きと罰の世界が形成されているわけですね。 - 日本文化
日本の文化は、仏教や中国文化の影響を受けているため、似たような死生観を持っています。また、自然崇拝の思想からくる“鬼”や“怨霊”に対する畏怖や敬いがあり、独自の鬼文化(Oni文化)が色濃く根付いています。
登別温泉の「閻魔堂」や「鬼祠堂」
登別温泉には「閻魔堂」という観光名所があり、閻魔王や鬼のイメージを取り入れた施設が点在。これらは“地獄”をテーマにした独特の世界観を楽しめるスポットとして知られています。
☆鬼像の“お決まり”スタイル
別府温泉や登別温泉などでは、鬼の石像やモニュメントが数多く見られます。
- 赤鬼・青鬼のように見た目が恐ろしげなもの
- どこか憎めない可愛らしい表情のもの
頭に角が生えて獰猛そうな牙を持ち、虎柄の腰巻きを纏い、金棒を携える姿が鬼像の定番スタイルです。
☆中日両国の“鬼”にまつわる行事
中国の三大“鬼節”
中国には、清明節・中元節・寒衣節の三つが“鬼と関わりの深い節”とされます。
日本の節分
日本の中元節は中国の中元節から由来するものですが、ほかにも毎年2月3日には“節分”という行事があり、「鬼は外、福は内!」と豆をまきます。鰯(いわし)の頭をヒイラギの枝に刺して玄関に飾り、鬼(厄)を払う習慣も。
近年では、ハロウィン(万聖節)の影響もあって、鬼や仮装に親しむ機会がますます増えています。
温泉地で見かける“愛嬌ある鬼”たち
実際に温泉街を歩くと、湯けむりが立ち込める中で鬼の像がニコニコしていたり、記念撮影スポットとして人気を集めています。
これは日本の“鬼”が必ずしも恐怖だけを象徴するわけではなく、観光・地域振興のマスコット的な役割を担っていることも多いからでしょう。
☆“鬼”にまつわる昔話や表現いろいろ
- 桃太郎(ももたろう)
日本でもっとも知られた昔話の一つ。鬼ヶ島(おにがしま)へ退治に行く勇ましい物語です。 - 鬼に金棒(おににかなぼう)
“鬼に金棒”は、すでに強い鬼がさらに最強の武器を手に入れるという意味で、要するに「鬼に金棒=鬼にかなぼう」=「とても強力」ということ。中国語の「如虎添翼」に近いニュアンスといえます。 - 鬼の居ぬ間に洗濯
これは「怖い(厳しい)人がいないすきに羽を伸ばす」イメージ。まさに「大王がいない間、小鬼たちが自由にはしゃぐ」ような状況を指すことわざです。 - 鬼瓦(おにがわら)
日本建築の屋根両端に据えられる装飾瓦。魔除けや火除けを願う意味があり、中国の建築でいう屋根に神獣を飾る文化と似ています。
まとめ:鬼文化を楽しもう!
中国と日本、それぞれで発展してきた“鬼”や“地獄”の概念は、温泉や祭事、物語など幅広い文化に根付いており、似ている部分も多い一方で独自の進化を遂げている点も興味深いところです。もし両国の文化や習慣をよく知っている方がいらっしゃったら、ぜひ感想や発見をシェアしてみてくださいね。
温泉街にある鬼のオブジェを見れば、ちょっと怖くて、でもどこか愛嬌があって……そんな“鬼”と出会うことで、日本の地獄や鬼文化を楽しく体感してみてはいかがでしょうか。